事業承継の方法は様々なものが考えられますが、その中でも国内で特に多く用いられているのが親族内事業承継というものです。
親族内事業承継には注意点も多くあり、承継を成功させるには詳細な流れについてもしっかりと知っておくことが重要です。
本稿では、親族内事業承継について、その流れと注意点もあわせて解説していきます。
親族内事業承継について
親族内事業承継とは、経営者が自分の親族に対して会社の経営の引き継ぎを行うことを指します。
この方法の場合、実際に承継を行う以前から後継者の育成、遺言書の作成や税金対策などをしておく必要があるため、数年前からの準備が必要となります。
また、経営者による直接の指名を受けた後継者が就任することから、企業理念が円滑に承継されやすいという特徴があります。
親族内事業承継の流れ
ここからは、親族内事業承継の流れについて見ていきましょう。
後継者の選定及び育成を行う
まずは、親族の中から後継者として適切な資質を持つ者を選定し、技術や知識を積ませるためのトレーニングを行います。
また、他の親族や企業のスタッフ等の関係者に、どのような形で後継者について伝えるかも考える必要があります。
会社の資産を承継する準備を行う
事業承継は、自社の株式を含む会社資産の移転を伴います。
そのため、できるだけ早く所有割合等を明らかにしておくべきであるといえます。
これによって、会社の体制が明確になるほか、後々に起こる揉め事の予防にもつながります。
また、これに伴う法的問題や税金の問題に対する対策を、あらかじめ考えることができます。
事業承継の周知を行う
企業のスタッフや株主、取引先といった利害関係人に、承継について周知を行います。
早めに事業承継の詳細について伝えることで、リスクへの対処や必要な調整を行いやすくなります。
具体的な承継手続を行う
ここまで来ると、実際の手続に取り掛かることになります。
この手続の中には相続や生前贈与、遺言等が含まれますが、特に遺言については慎重を期する必要があります。
これによって、会社資産を後継者に移転させることになるためです。
生前贈与を行うケースでは、税金対策についてもよく考える必要が生じます。
個人保証を後継者に変更する
現在の経営者が個人保証を行なっていたり、自分の資産を担保にしていたりするケースでは、金融機関とコンタクトを取ることでその名義を後継者のものに移す必要があります。
これについても、なるべく早いうちから話を進めておくことが重要です。
親族内事業承継の注意点について
親族内事業承継を成功させるためには、いくつか注意すべき点があります。
後継者はできるだけ早めに決めておく
現代では企業の後継者が不足している傾向にあるため、できるだけ早く後継者を選定し育成を開始しておくことが必要です。
後継者に適していない者を選定してしまうことで、企業が衰退してしまうケースもしばしばあります。
そのため、現経営者が元気なうちに適切な後継者を選定し、徹底した育成と引き続きを行なっておくことが重要です。
公正証書遺言の作成を行う
遺言書にはいくつかの種類がありますが、事業承継においては証明性の十分な公正証書遺言を選ぶのが望ましいといえます。
これによって、現経営者の望む形での承継が実現しやすくなります。
また、状況が変わった場合には、都度内容の更新を行っておくことも必要です。
税金対策を行う
事業承継には、相続税や贈与税の課税が伴い、場合によってはとても高額になることも多いです。
そのため、退職金の支払によって株式の評価額が下がったのち、株式を生前贈与するなどの方法が行われることもあります。
また、税制や補助金などについての最新情報をよく調べておくことも必要です。
まとめ
本稿では、親族内事業承継とは何なのかについて、流れと注意点もあわせて解説してきました。
親族内事業承継には様々な手続きを伴うほか、後継者の選定や育成が重要になってくるため、できるだけ早めに承継に向けて動き始めることが大切です。
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