業績不振や勤務態度の問題で従業員を解雇する場合、解雇の方法を間違えると、従業員との大きなトラブルに発展しかねません。
解雇をめぐる従業員とのトラブルの多くは「不当解雇」に付随するものですが、このようなトラブルを防ぐためには、会社側があらかじめ不当解雇とならないように対策を打ったうえで解雇を実施していく必要があります。
解雇は会社としてもやむを得ず行うものが大半ではありますが、解雇後さらに大きなトラブルが発生しないよう実際にある様々な解雇理由について説明します。
■ 考えられる解雇理由
解雇理由①病気やけがによる解雇
日常生活の中で何らかのケガを負い、そのケガが原因で会社に勤務できなくなった場合や、病気を発症して勤務が難しくなった場合などには解雇が認められます。
この場合、一般的には、就業規則に定められた休職期間休んでも復職できる状態になっていないことが条件の一つになります。休職期間経過後、もとの勤務形態に復帰することができなくても、短時間勤務や職場の配置変更などにより復帰できる余地がある場合には、解雇理由として認められない可能性もあるので、注意が必要です。
解雇理由②能力不足や成績不良による解雇
能力不足や成績不良を理由として解雇を検討する会社は多くあります。しかし、能力不足や成績不良は管理者側の主観的な要素が入っている可能性もあり、客観的な根拠が確認されないとされるケースもあるため注意が必要です。
そのため、会社が能力不足や成績不良を理由に解雇する場合には、十分な指導や配置転換を行ってもなお能力不足や成績不良が続いていることを示したり、入社時に求めていた専門性を有していないことを客観的に示せる証拠を用意しておいた方が安全です。
解雇理由③職場の雰囲気とマッチしない
他の従業員との協調が仕事上重要であるにも関わらず、他の従業員との協調性がなく、指導等によっても改善されない場合には解雇が認められます。
この理由についても他の解雇理由と同じように客観性に欠けるケースが多くみられるため、配置転換や指導など会社としてできることを十分に行った証拠を残しておいた方が安全です。
解雇理由④遅刻や欠勤が多い
遅刻や欠勤が多い従業員に頭を抱えている会社は多いかと思います。一回だけの遅刻や無断欠勤で即時に解雇することはできませんが、指導をしても遅刻や欠勤を繰り返す場合や、懲戒処分等を行った後も遅刻や欠勤を繰り返す場合には、解雇が可能です。
万が一、従業員と調停や裁判になった場合に備えて、タイムカード等の記録をしっかり残しておくことが重要です。
解雇理由⑤業務命令に反している
会社の業務命令に従わず、勤務態度がふさわしくない場合には解雇を行うことができます。
会社が持つ従業員に対して指示命令を行う権利のことを「業務命令権」といいますが、業務命令権には配置転換や転勤、出向、出張、健康診断の受診等があります。
そのため、ケースバイケースではありますが、出向や出張に応じない場合に会社側が解雇を検討することは可能です。
解雇理由⑥着服、横領、パワハラ、セクハラなどの規律違反
犯罪行為やハラスメント行為があった場合には、もちろん会社側はその従業員を解雇することができます。
ただし、十分な証拠がなければ解雇が認められないため、解雇を実行する前に十分な証拠を用意しておくことをお勧めします。
解雇理由⑦整理解雇
会社の経営不振等によって従業員を解雇することは可能です。このようなケースを「整理解雇」といいます。
整理解雇の多くは余剰人員の削減を目的に行われますが、この場合には下記の条件を満たす必要があります。
・人員を削減する必要がある
・解雇を回避するための努力をした
・解雇対象者の選定方法には合理的な理由がある
・解雇手続きは妥当な手段によって行われた
以上のようなケースのほかにも想定される解雇理由は数多くあるため、詳しくは弁護士までお尋ねください。
■ 実際に解雇を行う場合の注意点
上記のような解雇理由に基づいて解雇を行う場合、労働基準法に沿って解雇を実行する必要があります。
労働基準法上は、従業員を解雇する場合には「30日前の解雇予告」をしなければならず、一般的には解雇予告通知書により予告を行います。
万が一、30日以内に解雇を行う場合には、不足日数分の解雇予告手当が必要となるため、注意が必要です。
解雇によってトラブルが発生しないようにするには、客観的に見て妥当な理由を会社がそろえ、正当な手続きで解雇を検討することが重要です。
トラブルを未然に防ぐためにも、解雇の際には弁護士にご相談ください。
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