経営状態が悪化した企業が再建を試みる場合、民事再生を活用することが考えられます。
もっとも企業の倒産手続きには他にも種類があるため、どれを選択するか考えるためにも、民事再生とは何か、民事再生のメリットとデメリットにはどんなものがあるかについて知っておくことは重要です。
本稿では、民事再生とは何かについて、メリットとデメリットもあわせて解説していきます。
民事再生について
民事再生とは、経営状態が悪くなった企業が再建を図り、業績を回復させるために行う法的整理の一種です。
民事再生は民事再生法に基づいて行われ、経営陣も交代することなくそのまま再建を行うことになるという点にその特徴があります。
民事再生は倒産手続きのうちの「再建型」に位置づけられます。
倒産手続きは「再建型」「清算型」の2つに分けられ、前者は経営の破綻した企業を存続させ立て直すため、後者は企業の財産を金銭にし、債務者に支払をするために行うものです。
再建型には他にも「会社更生」と呼ばれるものがあります。
会社更生は会社更生法と呼ばれる法律に基づいて行われ、経営陣は退任し、裁判所が選任する管財人が経営を引き継ぐ点に民事再生との違いがあります。
民事再生の再生計画には、債務を圧縮し、その債務を自ら返済していく「自力再建型」、スポンサー企業から再建のため出資、貸付等を受ける「スポンサー型」、債務を圧縮し、事業を譲渡し、譲り受けた企業が返済と事業再建を行う「清算型」の3種類があります。
これらの再生計画については、企業を取り巻く経営環境に合わせたものが選択されることになります。
民事再生のメリット
ここからは、民事再生を行うことのメリットについて見ていきましょう。
経営陣の続投が可能
会社更生や破産など、他の倒産手続とは異なり、経営陣が継続して経営を行える点は、民事再生の大きなメリットといえます。
経営陣が交代する場合では、会社内の混乱を引き起こすこともあります。
民事再生であればそのようなことはなく、引き続き円滑な業務遂行ができるといえます。
事業の存続が可能
清算型の破産手続きとは違い、民事再生では事業を存続させたままで債務を返していくことができます。
そのため、技術や顧客、従業員の雇用をそのまま残して会社再建を進めることが可能です。
返済猶予も最長で10年間認められるため、その間に再建の手立てを見つけることになります。
資金の確保が可能
民事再生では、破産手続きのように銀行口座からの引き出しが行えなくなることはなく、借入金との相殺がされることもないため、口座にある資金を事業継続のために使うことができます。
民事再生のデメリット
では、民事再生を行うことのデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
費用がかかる
民事再生では債務の一部が免除され、債務が大幅に圧縮されます。
一方で、このような債務減免に伴って発生した債務免除益には、法人税等の税金がかかります。
また、倒産手続き自体にかかる費用を裁判所に支払う必要があるほか、専門家に手続きを依頼する場合にはその報酬も支払うことになります。
担保権が行使されるおそれがある
民事再生においても、担保権を設定した債権者には、これを行使することが認められています。
そのため、担保にした不動産などが存在する場合には担保権の行使によって回収されるリスクが存在します。
社会的信頼が低下することがある
企業の再建を目的とする民事再生であっても、倒産手続きであることに変わりはないため、顧客等からの信頼が落ちてしまい、事業運営や取引に支障をきたす可能性があります。
まとめ
本稿では、民事再生とは何かについて、メリットとデメリットもあわせて解説してきました。
民事再生は、債務を圧縮し、経営陣も交代せずに、事業の再建を図ることができるという点では、メリットが大きいように思われます。
もっとも、民事再生には相応の費用がかかるほか、担保にした不動産を失ったり、企業の信用を低下させたりするなどリスクがあることも頭に入れておきましょう。
民事再生は裁判所の手続を必要とし、倒産手続には複数の種類があり、企業を取り巻く経営環境によっては、選択する手続きは変わってきます。
そのため、適切な手続きを選択し、民事再生の場合にはその手続きをスムーズかつ確実に進めるためにも、まずは法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
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