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増資の手続と弁護士に依頼するメリット|株主総会決議・登記・税務の注意点を解説

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増資の手続と弁護士に依頼するメリット|株主総会決議・登記・税務の注意点を解説

会社の資金調達や財務基盤の強化、取引先・投資家との関係強化を目的として増資を検討する場面では、手続の複雑さに戸惑う経営者も少なくありません。増資には、株主総会の決議や登記など、会社法上のルールに従って進めなければならない手続が数多くあります。
手続に不備があると、新株発行の差止めや無効を主張されたり、株主・投資家とのトラブルに発展したりするリスクがあります。この記事では、増資の手続の流れと注意点、弁護士へ依頼するメリットを解説します。

この記事のポイント

  • 増資(募集株式の発行)では、非公開会社(株式の全部に譲渡制限がある会社。中小企業の大半が該当)の場合、取締役会があっても原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法199条2項・309条2項5号)。
  • 必要な決議を欠いた新株発行は、無効の訴え(非公開会社では効力発生日から1年以内)で無効とされるリスクがあります。
  • 払込額の2分の1までは資本金とせず資本準備金に計上でき、登録免許税(増加資本金額の0.7%)や税務(資本金1,000万円・1億円の壁)に影響します。
  • 第三者割当増資では、既存株主の持株比率の低下(希釈化)が経営権に直結するため、発行数・割当先の設計が重要です。

増資とは|募集株式の発行による資金調達

増資とは、株式会社が新たに株式を発行し(会社法上は「募集株式の発行等」)、引受人から出資を受けて資本を増やす手続です。融資と異なり返済義務を負わず、自己資本の充実により財務基盤・対外的な信用力を高められる一方、既存株主の持株比率が変動するという特徴があります。
なお、払い込まれた金額の全額を資本金にする必要はなく、2分の1までは資本金とせずに資本準備金として計上できます(会社法445条2項)。資本金の額は登録免許税や税務に直結するため、いくらを資本金に計上するかも増資設計の重要ポイントです。
増資の主な方法には、次の3つがあります。

  • 公募増資…広く一般の投資家に新株を引き受けてもらう方法(主に上場会社が利用)
  • 株主割当増資…既存の株主に対し、持株数に応じて新株を引き受ける権利を割り当てる方法
  • 第三者割当増資…特定の第三者(取引先・投資家・役員など)に新株を引き受けてもらう方法

中小企業や同族会社では、特定の投資家や取引先を引受先とする第三者割当増資が活用されるケースが多い傾向にあります。

増資の手続の流れと注意点

①決議機関の確認(最も間違えやすいポイント)

募集株式の発行では、募集株式の数・払込金額・払込期日などの「募集事項」を決定します。どの機関で決定するかは、会社が公開会社か非公開会社(株式の全部に譲渡制限がある会社)かによって決まります。

会社の区分募集事項の決定機関(原則)例外
非公開会社(中小企業の大半)株主総会の特別決議(会社法199条2項・309条2項5号)株主総会の特別決議で募集株式数の上限・払込金額の下限を定めて取締役会(取締役)に委任可能(200条)。株主割当てについて定款に定めがある場合は取締役会等で決定可能(202条3項)
公開会社取締役会決議(201条1項)有利発行の場合は株主総会の特別決議が必要

「取締役会があるから総会は不要」は誤解です

非公開会社では、取締役会設置会社であっても、原則として株主総会の特別決議が必要です。判例上、非公開会社で株主総会の特別決議を欠いたまま行われた新株発行は無効原因があるとされており(最高裁平成24年4月24日判決)、増資自体が無効とされるリスクに直結します。決議の要否・種類の判断は、増資手続の出発点として最も重要です。
また、増資後の発行済株式総数が定款の発行可能株式総数を超える場合には、先行して定款変更(株主総会の特別決議)が必要です。引受先が決まっている場合に用いられる総数引受契約(205条)でも、譲渡制限株式については契約承認の決議が必要となるなど、細かな手続要件の確認が欠かせません。

②払込金額の設定(有利発行・課税リスク)

新株の払込金額は、既存株主の利益を不当に害しない価格に設定する必要があります。引受人にとって「特に有利な金額」での発行(有利発行)にあたる場合、非公開会社ではもともと必要な株主総会の特別決議に加えて、取締役がその金額で募集することを必要とする理由を株主総会で説明しなければなりません(会社法199条3項)。公開会社では、通常は取締役会決議で足りるところ、有利発行の場合には株主総会の特別決議が必要になります(201条1項)。
必要な決議や説明を欠いた発行は、株主による差止請求(210条)の対象となるほか、新株発行無効の訴え(828条1項2号。提訴期間は効力発生日から公開会社6か月・非公開会社1年)に発展するリスクがあります。
また、同族会社で時価より著しく低い価額で第三者割当てを行うと、既存株主から引受人へ経済的利益が移転したものとして、贈与税等の課税リスクが生じる場合があります(相続税法9条)。払込金額の設定は、会社法と税務の両面からの検討が必要です。

③出資の履行(現物出資・DESの注意点)

出資は金銭によるのが原則です。不動産や債権などの現物出資を受ける場合には、原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要ですが、価額の総額が500万円以下の場合や、弁護士・公認会計士・税理士等の証明を受けた場合など、調査が不要となる例外もあります(会社法207条9項)。
役員や取引先からの借入金を株式に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ)も、弁済期が到来した金銭債権を帳簿価額以下で出資する場合には検査役調査なしで実行できます。ただし税務上の論点(債務消滅益課税など)が別途生じるため、税理士との連携が必要です。なお、実際の払込みを仮装する「見せ金」による増資は、関係者が支払義務や刑事責任を問われる重大な法令違反です。

④変更登記(効力発生から2週間以内)

増資により資本金の額や発行済株式総数が変わった場合には、変更登記を申請しなければなりません。申請期限は、払込期日(払込期間を定めた場合はその末日)から2週間以内です(会社法915条)。期限を過ぎると100万円以下の過料の対象となり得るため(976条1号)、スケジュール管理が大切です。
変更登記には、増加した資本金の額の1,000分の7(0.7%)の登録免許税がかかります(計算額が3万円未満の場合は3万円)。資本準備金に計上した部分には課されないため、前述の資本金計上額の設計が登記コストにも影響します。

⑤資本金の額と税務への影響(1,000万円・1億円の壁)

増資後の資本金の額によって、税務上の取扱いが大きく変わる場合があります。代表的なものは次のとおりです。

  • 資本金1,000万円…設立から2年以内の会社では、事業年度開始日の資本金が1,000万円以上になると消費税の免税事業者の特例を受けられません。法人住民税の均等割も資本金等の額に応じて増加します。
  • 資本金1億円…1億円を超えると、法人税の軽減税率や交際費の定額控除など中小法人向けの特例が使えなくなり、法人事業税の外形標準課税の対象にもなります。

かつては「増資で1億円を超えても、後に減資すれば外形標準課税から外れられる」という対応も見られましたが、令和6年度税制改正により、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人などについて減資による適用回避が制限されました。増資の段階から、資本金計上額と将来の資本政策を見据えた設計がいっそう重要になっています。

増資を弁護士に依頼するメリット

会社法上の手続を正確に進め、無効リスクを避けられる

ここまで見たとおり、増資の手続は「どの機関の決議が必要か」の判断から始まり、招集手続・決議・払込み・登記まで、会社法の規定に沿って正確に進める必要があります。弁護士に依頼することで、手続の不備による差止め・無効のリスクを避け、会社の状況に応じた適切な増資スキーム(発行数・払込金額・資本金計上額・種類株式の活用など)の提案を受けられます。

契約書・議事録などの書類作成を任せられる

増資では、株主総会議事録・取締役会議事録、株式引受契約書(総数引受契約書)、投資家との投資契約書など、多くの書類を作成する必要があります。これらの書類に不備や記載漏れがあると、登記が通らないだけでなく、後日のトラブルや決議の効力を争われる原因になります。
特に投資家との投資契約書には、表明保証、経営に対する関与(取締役の指名権・事前承諾事項)、株式の買戻条項など、会社と経営者に長期的な影響を与える条項が含まれることが通常です。会社にとって過度に不利な内容になっていないか、専門家のチェックが不可欠です。

投資家・株主との交渉を任せられる

第三者割当増資では、引受先となる投資家や取引先との間で、払込金額・株式の内容(普通株式か種類株式か)・経営への関与の範囲などの条件交渉が必要になります。弁護士が交渉に関与することで、法的リスクを押さえながら、会社にとって合理的な条件を引き出しやすくなります。既存株主への説明や、希釈化(持株比率の低下)に不満を持つ株主への対応も、法的観点から整理して進められます。

増資後のトラブルにも継続して対応してもらえる

増資後に、株主間で意見の対立が生じたり、投資家から契約内容についてクレームが入ったりするケースもあります。増資の手続段階から関与している弁護士であれば、経緯を把握したうえで迅速に対応できます。登記申請は司法書士、税務は税理士と、それぞれの専門家と連携しながら全体を設計できる点も、弁護士に依頼するメリットです。継続的なサポートを受けたい場合には、顧問契約の活用も有効です。

よくある質問(FAQ)

Q.取締役会を設置していれば、株主総会を開かずに増資できますか?

A.ほとんどの中小企業(非公開会社)では、できません。非公開会社の募集株式の発行には原則として株主総会の特別決議が必要で、取締役会決議のみで行うには、あらかじめ株主総会の特別決議で募集枠(株式数の上限・払込金額の下限)を定めて委任を受けるなどの手続が必要です。総会決議を欠いた発行は無効とされるリスクがあります。

Q.増資の登記を忘れるとどうなりますか?

A.変更登記の期限は効力発生(払込期日または払込期間の末日)から2週間以内で、登記を怠ると100万円以下の過料の対象となり得ます。また、登記が完了するまで、金融機関や取引先に増資を証明できず、融資審査や取引にも支障が生じます。

Q.1株いくらで発行すればよいですか?

A.既存株主の利益を害さないよう、会社の時価(純資産や収益力等に基づく評価額)を基準に設定するのが原則です。時価より特に有利な金額で発行する場合には追加の手続が必要になり、同族会社では課税リスクも生じ得ます。株価算定は税理士等とも連携して慎重に行う必要があります。

Q.資本金はいくら増やすのがよいですか?

A.払込額の2分の1までは資本準備金に計上できるため、「いくら調達するか」と「いくらを資本金にするか」は分けて設計できます。資本金1,000万円・1億円という税務上の基準や登録免許税、対外的な信用力とのバランスを踏まえて決めることになります。

Q.一部の株主が増資に反対しています。進められますか?

A.非公開会社では株主総会の特別決議(出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)が可決要件ですので、反対株主がいても要件を満たせば決議自体は可能です。ただし、特定の株主の持株比率を下げる目的など不当な目的による発行は、差止めや無効の主張を招くリスクがあります。反対株主への説明・記録の残し方も含めて、事前に弁護士へご相談ください。

まとめ|増資は「決議機関の判断」と「設計」がすべて

増資を進めるうえでは、公開会社・非公開会社の区別に応じた決議機関の判断、払込金額と資本金計上額の設計、登記期限の遵守など、法律上の注意点が多くあります。手続の不備は新株発行の無効リスクに直結するため、事前の設計段階から専門家が関与する価値の大きい手続です。
澁谷・坂東法律事務所(大阪市北区)では、増資・資金調達を含む中小企業の企業法務に関するご相談を承っております。増資をご検討の際は、手続を始める前に、まずはお気軽にご相談ください。

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