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会社間で共同開発をするときに気を付けるべきこと|契約書で定めるべき事項を弁護士が解説

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会社間で共同開発をするときに気を付けるべきこと|契約書で定めるべき事項を弁護士が解説

複数の会社が協力して新製品や新技術を開発する共同開発は、各社の技術やノウハウを活かせる有効な手段です。しかし、知的財産権の帰属や秘密情報の管理など、事前に取り決めておくべき事項は数多くあります。取り決めをしないまま開発を始めると、開発の途中や完了後に深刻なトラブルに発展しかねません。

この記事では、会社間で共同開発を行う際に気を付けるべきことを、契約実務の観点から解説します。

この記事のポイント

  • 共同開発で最も重要なのは、開発成果(知的財産権)の帰属と利用条件の取り決めです。契約で定めない場合は法律のデフォルトルールが適用され、思わぬ不都合が生じます。
  • 共有特許は各社が自由に自己実施できる一方、第三者へのライセンスや持分譲渡には相手の同意が必要です(特許法73条)。「共有=公平」とは限りません。
  • 本格的な情報交換を始める前に秘密保持契約(NDA)を締結し、社内でも秘密管理体制を整えることが必要です。
  • 販売地域・競業制限などの条項は独占禁止法上問題となり得るほか、実質が委託取引の場合は2026年1月施行の取適法(旧下請法)の適用にも注意が必要です。

共同開発を始める前に確認・準備すべきこと

共同開発を始める前に、次の点をあらかじめ確認しておくことが重要です。

  • 知的財産権の帰属と取り扱い(自社の狙いは製品化か、ライセンス収入か)
  • 秘密情報の管理方法(検討段階のNDA締結を含む)
  • 各社の役割分担と費用負担の割合
  • 開発スケジュールと目標の共有
  • 開発が中断・失敗した場合の対応
  • 自社の職務発明規程が整備されているか

このうち見落とされがちなのが、最後の職務発明規程です。共同開発の成果は、法律上はまず各社の従業員(発明者)に生じます。勤務規則等で職務発明に関する定めを置いておけば、特許を受ける権利を発生時から会社に帰属させることができます(特許法35条3項)。自社の規程が未整備のままでは、契約で「成果は両社共有」と定めても、その前提が揺らぎかねません。
また、共同開発の検討段階では、契約締結前にお互いの技術情報を開示し合うのが通常です。本契約より前に、まず秘密保持契約(NDA)を締結してから情報交換を始めるのが実務の鉄則です。交渉が決裂した場合に、開示済みの情報だけが相手に残るという事態を防ぐためです。

最重要ポイント|知的財産権の帰属と「共有」の落とし穴

共同開発で最も重要な取り決めが、開発によって生じた知的財産権(成果物)の帰属です。契約で定めなかった場合に適用される法律のデフォルトルールを知っておくと、取り決めの重要性がよくわかります。

共有特許のデフォルトルール(特許法73条)

特許権を共有とした場合、各共有者は、契約で別段の定めをしない限り、他の共有者の同意なく自由にその発明を実施(自社製品の製造・販売など)できます。一方で、持分の譲渡や第三者へのライセンスには、他の共有者の同意が必要です(特許法73条)。
この結果、たとえば製造能力のあるメーカーと、製造部門を持たない研究開発型の会社が成果を共有した場合、メーカーは自由に製品化して利益を上げられるのに対し、自社で実施できない会社はライセンスによる収益化に相手の同意が必要となり、大きく不利になり得ます。「共有にしておけば公平」とは限らないのです。

共有著作権のデフォルトルール(著作権法65条)

ソフトウェアやデータベースなどの著作物を共有とした場合は、さらに厳格で、共有者全員の合意がなければ著作権の行使(利用許諾など)自体ができません。持分の譲渡にも他の共有者の同意が必要です。システムやプログラムの共同開発では、この点を踏まえた利用条件の設計が不可欠です。

行為 共有特許(特許法73条) 共有著作権(著作権法65条)
自社での実施・利用 各共有者が自由にできる(別段の定めがない限り) 共有者全員の合意が必要
第三者へのライセンス 他の共有者の同意が必要 共有者全員の合意が必要
持分の譲渡 他の共有者の同意が必要 他の共有者の同意が必要

こうしたデフォルトルールを踏まえて、成果を共有とする場合には持分割合・実施料の精算・第三者ライセンスの条件を、一方に帰属させる場合には他方がどのような条件で成果を利用できるか(無償・有償、独占・非独占など)を、契約書で明確に定めておく必要があります。あわせて、各社が開発前から持っていた既存の技術・知財(バックグラウンド情報)と、開発によって生じた成果(フォアグラウンド情報)を区別し、それぞれの利用条件を定めておくことも重要です。

共同開発契約で定めるべき事項と注意点

秘密保持義務と営業秘密の管理

共同開発では、各社の技術情報や営業上のノウハウを相互に開示し合う場面が生じます。契約書に秘密保持条項を設けておけば、情報の目的外利用や第三者への開示を義務違反とし、違反があった場合に差止めや損害賠償を請求する根拠となります。秘密保持の対象となる情報の範囲、存続期間(契約終了後も含む)、開発終了時の返還・廃棄についても明確に定めましょう。
あわせて注意したいのが、不正競争防止法による「営業秘密」としての保護を受けるには、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす必要がある点です(同法2条6項)。契約書を交わしていても、社内で「マル秘」表示やアクセス制限などの秘密管理措置を講じていなければ、法的保護を受けられないおそれがあります。契約と社内管理はセットで整えることが大切です。

役割分担と費用負担

各社の担当業務が曖昧なままでは、責任の所在がはっきりせず、遅延や品質問題が生じた際のトラブルにつながります。開発項目ごとの担当、費用負担の割合、進捗に応じて追加費用が発生した場合の手続(協議・承認プロセス)まで、あらかじめ合意しておきましょう。

成果の利用条件と独占禁止法の注意点

開発成果を利用した製品の販売地域・販売先、ライセンス料の有無、開発終了後に各社が独自に改良・応用できるかといった利用条件も、契約書に明記しておくべき事項です。
ただし、ここには法律上の注意点があります。成果を利用した製品の販売地域・販売先・数量の制限、成果を利用した研究開発(改良)の制限、共同開発終了後の競業制限などは、内容や期間によっては独占禁止法上の不公正な取引方法に該当するおそれがあります(公正取引委員会「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」)。「契約書に書いてあれば有効」とは限らないため、制限条項の設計には専門的な検討が必要です。

開発が中断・失敗した場合の対応

共同開発は、必ずしも当初の目標どおりに完了するとは限りません。中断・失敗した場合の費用の精算方法、それまでに生じた中間成果の帰属、各社が独自に開発を継続できるかどうかについて、あらかじめ取り決めておくことが重要です。撤退条件(マイルストーンの未達など)を明確にしておくと、ずるずると費用だけがかさむ事態も防げます。

取引上の力関係に関する法規制にも注意(取適法・独禁法)

「共同開発」という名目・契約形式であっても、実質的に一方が他方に製造や開発を委託する取引(製造委託・情報成果物作成委託など)にあたる場合には、取適法(中小受託取引適正化法。旧下請法が2026年1月1日に改正・改称されたもの)が適用され得ます。取適法の適用対象は資本金基準に従業員数基準が追加されて広がり、手形による代金支払いの禁止や、協議に応じない一方的な代金額の決定の禁止などが定められています。委託側・受託側のいずれの立場でも、自社の取引が適用対象かどうかの確認が必要です。
また、大企業と中小企業・スタートアップの共同開発では、貢献度に見合わない知的財産権の一方的な帰属や、名ばかりの「共同研究」による成果の吸い上げ、ノウハウの無償開示の強要などが、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となり得ることが、公正取引委員会等の指針で明示されています。不利な条項を提示された場合に「そういうものだ」と諦める必要はありません。
なお、契約書のたたき台としては、経済産業省・特許庁が公表する「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」や、中小企業庁「知的財産取引に関するガイドライン」の契約書ひな形も参考になります。ただし、ひな形はあくまで一般形であり、自社の狙い(製品化か、ライセンスか、販路獲得か)に合わせた修正が不可欠です。

共同開発契約書の作成・チェックを弁護士に依頼するメリット

共同開発を行う際には、取り決めた内容を契約書として書面に残しておくことが不可欠です。弁護士に依頼することで、次のようなメリットが得られます。

  • 自社の事業戦略(製品化・ライセンス・販路など)に合わせて、知的財産権の帰属・利用条件を設計してもらえる
  • 秘密保持条項や競業に関する条項を、独占禁止法などの規制に配慮した有効な形で盛り込んでもらえる
  • 相手方が提示した契約書に不利な条項(成果の一方的帰属、過大な責任負担など)が含まれていないかをチェックしてもらえる
  • 取適法・独禁法など関連規制への抵触リスクを事前に確認してもらえる
  • トラブルが発生した場合に、契約書をもとに迅速に対応してもらえる

共同開発契約書は、開発の成否だけでなく、その後のビジネス展開にも大きな影響を与える重要な書類です。専門家のサポートを受けることで、自社の権利を守りながら共同開発を進めることができます。

よくある質問(FAQ)

Q.契約書を作らないまま共同開発を始めてしまいました。今からでも間に合いますか?

A.間に合います。開発の途中からでも、合意できる事項を覚書や契約書の形で書面化しておくべきです。あわせて、これまでのメール・議事録・仕様書など、合意内容や各社の貢献を示す資料を保全しておいてください。成果が生まれた後になるほど利害が対立して合意が難しくなるため、できるだけ早い段階での書面化をおすすめします。

Q.開発成果は「共有」にしておけば公平ですか?

A.必ずしも公平とは限りません。共有特許では各社とも自由に自己実施できるため、製造能力のある会社だけが利益を上げ、実施できない会社はライセンスに相手の同意が必要という不均衡が生じ得ます。自社の収益化の方法(製品化か、ライセンス収入か)から逆算して、帰属と利用条件を設計することが重要です。

Q.相手から提示された契約書に、そのままサインしても大丈夫でしょうか?

A.署名前のリーガルチェックを強くおすすめします。相手方が用意した契約書は、成果の帰属・責任の範囲・解除条件などが相手方有利に設計されているのが通常です。特に大企業から提示されたひな形であっても、貢献に見合わない知財の一方的帰属などは独占禁止法上問題となり得るもので、修正交渉の余地は十分にあります。

Q.共同開発の相手が、成果や当社のノウハウを勝手に使っています。どうすればよいですか?

A.契約違反(秘密保持義務・目的外使用禁止違反)や不正競争防止法違反を理由に、差止め・損害賠償を請求できる可能性があります。まずは契約書の条項と、開示した情報・相手の使用状況を示す証拠を整理してください。対応方針の見極めが重要ですので、早めに弁護士へご相談ください。

まとめ|共同開発は「契約書の設計」で成否が決まる

会社間で共同開発を行う際には、知的財産権の帰属(デフォルトルールを踏まえた設計)・秘密保持・役割分担と費用負担・成果の利用条件・中断時の対応など、事前に取り決めておくべき事項が多くあります。独占禁止法や取適法といった規制への目配りも欠かせません。
澁谷・坂東法律事務所(大阪市北区)では、共同開発契約書・秘密保持契約書の作成やリーガルチェック、企業間トラブルの対応について、中小企業の立場に立ったサポートを行っています。共同開発に関してお悩みの方は、契約書に署名する前に、まずはお気軽にご相談ください。

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